最近、話題のMCPについてです。
東京都知事選にも出馬された安野貴博さんのYoutubeで知ってとても興味を持ったのですが、よくわからない点も多かったので自分でも使ってより深く理解しようと思います。
MCPとは「Model Context Protocol」の略で、簡単に言うと「AIが外部のツールやデータにアクセスするための共通の通信ルール・仕組み」のような存在です。例えるなら「AI用のUSB-Cケーブル」や「共通言語」で、AIと外部サービスの間で“どうやって話すか”を決めています。
安野貴博さんがYoutube内で紹介されていたUbie社の事例はコチラだと思います。
gurichan: はい。Ubieには「Ubie Vitals」というデザインシステムがあります。
これは、誰でも効率よく迷わずにUbieらしい表現を実現するためのデザイン原則やコンポーネントライブラリを定めたものです。
フロントエンドが得意なエンジニアも、私のようにバックエンド中心のエンジニアも、Ubie Vitalsに従うことで一貫性のあるUIを構築できます。今回、このUbie VitalsをMCP (Model Context Protocol) サーバー化しました。
これにより、AIエージェント(例えばCursorなど)がUbie Vitalsの情報を利用できるようになり、具体的には以下のようなことが可能になりました。
- FigmaのデザインからUIを自動生成: FigmaからMCPサーバー経由でデザイン情報を取得し、Ubie Vitalsに準拠したUIコードを生成する。
- テキスト指示からUIを自動生成: 「ユーザー情報入力フォームをUbie Vitalsのコンポーネントで作成して」のようなプロンプトで、Ubie Vitalsに準拠したUIコードを生成する。
- 画像など他の形式からもUIを生成可能に。
結果として、UI実装にかかる工数を大幅に削減できました。
記事には、人間がFigmaデザインから実装した場合と、AIエージェントが実装した場合の比較スクリーンショットも掲載しています。
とても参考になったので原文もぜひ読んでみてください。
https://note.com/olivaoh/n/n9b0eec03acbd
さてMCPの話ですが、従来、AIがGoogle DriveやSalesforceなどの外部ツールを操作するには、それぞれ専用のAPIや個別の設定が必要でした。しかしMCPを使うことでMCPという共通の通信ルールのなかでClaude等のAIをGoogle DriveやSalesforceとつなぎ「どのツールを、どんな条件で、どう使うべきか」をClaude等が判断して実行できるようになります。
なぜMCPが注目されているのか?

OpenAIのサム・アルトマンCEOも支持
OpenAIのサム・アルトマンCEOは「人々はMCPを愛しており、当社の製品全体でサポートを追加できることを嬉しく思う」と発言しました。これは競合であるAnthropicが開発したプロトコルを自社製品に採用するという宣言です。
なぜこれほど重要なのでしょうか?それは主に3つの理由があります。まず業界標準化の推進です。バラバラだった連携方法を統一し、「一度つなげば、どのAIでも同じように使える」状態へと進化させます。次にユーザビリティの向上です。例えばSlackで「今月の売上を教えて」と言うだけで、AIがGoogle DriveとSalesforceから自動でデータを集計するといったことがノーコードで実現できます。
そして3つ目はAI活用の本格化です。AIを「便利な道具」から「必須の仕事ツール」へと進化させ、社内のあらゆるデータを駆使して仕事を完結させる能力を与えます。
MCPとは何か?初心者にもわかるやさしい解説
MCPの概念は一旦分かったと。ただ「具体的に何ができるようになるの?」という疑問が湧きます。ここでは、法人の事例を紹介させていただきつつ、個人ベースで何ができるのかを考えてみたいと思います。
法人でのMCP活用事例
ブランド管理におけるMCP活用事例
企業のロゴ使用ルールや文章表現ガイドラインをまとめた「ブランドブック」をAIに学習させることで、社内の資料作成を自動チェックできます。例えば新入社員がチラシを作成すると、AIが「このロゴのサイズは規定と違います」「ここで使われている色はブランドカラーではありません」と指摘し、修正案も提案してくれます。
株式会社ヘッドウォータース「SyncLect AI Agent」

MCPをCRMシステムとプロジェクト管理ツール連携に導入。従来は独立していた顧客データ分析AIとタスク管理AIを統合し、以下の効果を実現:
- 自動化拡大:顧客データに基づくパーソナライズメール作成→未完了タスクの自動更新→記録管理を一連フロー化
- 生産性向上:複数部門間の手動連携作業を80%削減
- コスト削減:個別開発していたAIエージェント統合により開発費を40%低減
LAPRAS株式会社

転職マッチングサービスでMCP対応を実施
- AI活用高度化:求人情報とユーザープロファイルをAIがMCP経由で解釈→適切なキャリア提案を自動生成
- 業務効率化:企業側の採用条件と候補者希望をMCPで紐付け→マッチング精度を35%向上
- UX改善:AIエージェントとの自然な対話を通じた求人検索が可能に
個人レベルでのMCP活用例
1. ファイル管理・資料要約の自動化
個人事業主やフリーランスが、自分のパソコン内の大量の資料(PDFやWordファイルなど)を管理する際、MCP対応のAI(例:Claude Desktop)を使うと、「デスクトップの”2025年上半期レポート.pdf”を要約して」などと指示するだけで、AIがファイルを直接読み込み、全体の要点や特定の章の内容をまとめてくれます。
この方法だと、いちいちファイルを開いて読む手間が省け、短時間で必要な情報を把握できます。また重要な資料だけをピックアップして、さらに深掘りした質問もできるようになります。
個人レベルでのMCP活用例
2. 定型業務の自動化(請求書・報告書作成など)
フリーランスや個人事業主が、毎月の請求書や報告書を作成する際、MCPでAIにテンプレートを指定して「今月分を作って」と指示すると、AIが売上データや必要情報をもとに自動で書類を作成してくれます。
手作業での書類作成が不要になりミスも減るので、作業時間が大幅に短縮され、他の仕事に集中できるようになります。
個人レベルでのMCP活用例
3. 複数アプリをまたいだ作業の自動化
MCP対応AIを使い、Google Drive・Slack・カレンダーなど複数のサービスを連携することで、「今週のスケジュールをまとめてSlackに送って」と指示するだけで、AIがカレンダーから予定を取得し、Slackに自動で共有してくれます。
これにより、いろいろなアプリを行き来する手間がなくなり、情報整理や共有がスムーズになります。
個人レベルでのMCP活用例
4. データ分析やレポート作成の効率化
個人のプロジェクトや副業で、売上やアクセス数などのデータを自分のデータベースやスプレッドシートからAIに取得させ、「今月の傾向をグラフでまとめて」と依頼すると、AIが自動で分析し、グラフや要約を作成してくれます。
専門知識がなくてもデータ分析やレポート作成ができ、短時間で意思決定に必要な情報が手に入ります。
ZapierとMCPの連携:より強力な自動化へ
「MCPがあればすべて解決するのでは?」と思われるかもしれませんが、実用的なシステムを構築するには、MCPとZapierを組み合わせることが効果的です。
この組み合わせが有効な理由は複数あります。まず、AIの柔軟な判断を活かせる点です。MCPはAIが「状況に応じて動的に処理方法を選択」できる仕組みです。例えば請求書の修正が必要な場合、AIが文脈に応じて最適なアクションを選べます。
また、ノーコードで複雑な連携が可能である点も大きなメリットです。Zapierの8,000+サービス連携をそのまま活用でき、APIの知識が不要です。例えばfreeeの請求書作成APIを直接叩かなくても、Zapierの既存テンプレートを使えます。
さらに、セキュリティ管理が容易である点も見逃せません。OAuth認証や権限管理をZapierが一元管理(MCPサーバー経由で安全に連携)できます。
MCP+Zapierを使うことで、それぞれの得意分野を組み合わせた強力な自動化システムを構築することができるのです。
実際にMCPを使った定型業務の自動化ステップ
「概念は分かったけど、実際どうやるの?」という疑問は多くの方が持つことでしょう。ここでは、新卒や非エンジニアでもイメージできるよう、実際の導入ステップを解説します。
まず、やりたい業務・自動化したい作業を明確に決めることが重要です。例えば「毎月の請求書を自動で作りたい」「カレンダーの予定をまとめてSlackに送りたい」といった具体的なゴールを設定しましょう。
次に、MCP対応AIツールを選びます。Claude DesktopやDify、Zapier連携AIなど、MCP対応のAIアプリを用意します。多くはノーコードで使えるので専門知識は必要ありません。
続いて、使いたいサービスをMCPでつなぎます。Google Drive、Slack、カレンダーなどのサービスをMCPサーバー(仲介役)に登録し、AIからアクセスできるようにします。
そして、必要なテンプレートやデータを用意します。請求書や報告書の「ひな型」(ExcelやWord)をDriveやPCに保存し、スケジュールや売上データもDriveやスプレッドシートにまとめておきます。
最後に、AIに「やってほしいこと」をチャットで伝えます。「今月分の請求書を作って」「今週の予定をまとめてSlackに送って」などと指示するだけで、AIが自動で作業を実行してくれます。
請求書自動化の具体例を作ってみよう
例えば、「LINE → MCP対応AI → Zapier → freee → PDF生成 → LINE返信」という請求書自動発行システムを作成してみたいと思います。
ポイントはMCPである理由、そのベネフィットをより明らかにすること。同時に実現の工数も明らかにすること。現時点で相応に時間が必要なのか、非エンジニアでもAIの力を借りたらなんとかなるのか…(なんとかなるならどんどん楽にしていきたいですよね!)
LINEで「請求書作成して」とメッセージを送ると、Zapierがそのメッセージをトリガーとして受け取ります。次にZapierがfreeeと連携し、必要な顧客情報や金額などを自動でfreeeに渡して請求書を作成します。
作成した請求書データはMCP対応のAI(ChatGPTなど)に渡され、「説明文だけ修正して」などの指示を自動で行うことができます。修正された請求書はZapierがGmailに添付し、指定の宛先に自動送信します。そして最後にZapierが「請求書を送付しました」とLINEに自動通知するイメージです。
こうした一連の流れがすべて自動で行われれば、私達の月末業務はかなり楽になるはずです。
MCPとAIエージェントの関係と違い
様々なツールをつないで目的を達成すると言われるとAIエージェントを思い出す方もいるかもしれません。そのAIエージェントのとの関係性もここで整理しておきましょう。
MCPとAIエージェントの違いとは
項目 | MCP | AIエージェント |
---|---|---|
正体 | AIと外部ツールをつなぐ“共通ルール”や“規格” | 目的を持って自律的に動く“AIそのもの” |
役割 | ツールやデータへの接続・連携を標準化 | 実際に業務やタスクを遂行する |
例 | AIがGoogle DriveやSalesforceと連携できるようにする | 顧客からの問い合わせに自動回答するAI |
MCPとAIエージェントの関係性とは
- MCPはAIエージェントの“能力拡張のための道具箱”
AIエージェントはMCPを使うことで、いろいろなシステムやデータベース、業務ツールと簡単につながり、より高度な仕事ができるようになります。 - MCPがなければ…
AIエージェントが外部ツールや社内データにアクセスするたびに個別の設定や開発が必要ですが、MCPがあれば「つなぐだけ」でOKになります。
具体例
- MCPなしのAIエージェント
→「FAQに答えるだけ」「決まった範囲の作業しかできない」 - MCPありのAIエージェント
→「顧客の過去の取引データを調べて最適な提案をする」「最新の業界ニュースを自動で取得して分析する」など、複数のデータソースやツールを横断した複雑なタスクもこなせる
MCPはAIエージェントの“道具箱”や“共通言語”としてAIエージェントがより賢く、幅広い業務を自律的にこなせるようにします。両者は「役割が違うが、組み合わせることでAIの力を最大限に発揮できる」関係です
MCPの今後の展望:MCPがもたらす業務自動化の未来
MCPは「AIとデジタルツールをつなぐ共通言語」として、業務のあり方そのものを変革する可能性を秘めています。これが普及すると、「面倒な設定なしに、AIがあなたの仕事をサポートする」のが当たり前になるかもしれません。
資料作成・データ分析・連絡業務など、ルーティンワークが減り、本当に価値ある仕事に集中できる時代が来ています。2025年末までに主要クラウドサービスの90%が対応予定といわれており、AIによる業務自動化は今後ますます身近になるでしょう。

業界標準化の加速も見込まれています。GoogleやMicrosoftもMCPサポートを表明しており、2025年末までに主要クラウドサービスの90%が対応する見込みです。AI開発コストが最大70%削減され、スタートアップ参入が増加するでしょう。
Just a few weeks after OpenAI said it would adopt rival Anthropic’s standard for connecting AI models to the systems where data resides, Google is following suit.
In a post on X on Wednesday, Google DeepMind CEO Demis Hassabis said Google would add support for Anthropic’s Model Context Protocol, or MCP, to its Gemini models and SDK. He did not specify a timeline for when this would be done.
“MCP is a good protocol and it’s rapidly becoming an open standard for the AI agentic era,” wrote Hassabis. “Look forward to developing it further with the MCP team and others in the industry.”
出典:https://techcrunch.com/2025/04/09/google-says-itll-embrace-anthropics-standard-for-connecting-ai-models-to-data/
また、ChatGPTの機能拡張も期待されています。デスクトップアプリでローカルファイルの直接操作が可能になり、例えばExcelファイルの自動分析なども行えるようになります。企業向けAPIではCRM・ERPシステムとの連携が簡素化されることでしょう。
さらに、新たなビジネスモデルの誕生も予想されます。MCPマーケットプレイスが登場し、開発者が作成したMCP連携ツールの販売プラットフォームが生まれるでしょう。また、AIエージェントの自律化により、複数ツールを跨いだ自動業務処理が一般化します。例えば請求書発行から銀行振込、Slack通知までの一連のフローが完全自動化されるといったことが現実のものとなります。
MCPとMCPサーバーは何が違うんだ?

ここで非エンジニアから素朴な疑問をいただきました。「MCP(Model Context Protocol)とMCPサーバーは、役割と仕組みで何がちがうの?」という疑問です。
エンジニアの皆さん…笑わないでください。非エンジニアなんてそんなもんです。
MCP(Model Context Protocol)とは?
- MCP(Model Context Protocol)は、「AIと外部のツールやデータをつなぐための共通ルール(プロトコル)」です。
- たとえば、AIがGoogle Driveや社内データベース、ファイルサーバーなど色々なサービスとやりとりする時の「決まりごと」を標準化したものです。
MCPサーバーとは?
- MCPサーバーは、「MCPという共通ルールに従い、AIが使えるツールやデータへの入り口となるプログラムやサービス」です。
- 例えば「Google Drive用」「Salesforce用」「ローカルファイル用」など、それぞれのサービスやデータごとにMCPサーバーが用意されます。
- AI(ClaudeやChatGPTなど)は、MCPクライアントを通じてMCPサーバーに「このデータを取ってきて」「このツールを使って」とリクエストし、MCPサーバーが実際にデータ取得や操作を行って結果を返します。
たとえば…
- MCP=「共通の言語」
- MCPサーバー=「その言語で話せる受付窓口」
AIはMCPという共通言語で「受付窓口(MCPサーバー)」に依頼し、必要なデータや操作をしてもらうイメージです。
MCPは「AIと外部サービスをつなぐためのルールや仕組み」でMCPサーバーは「そのルールに従って、実際にデータやツールへのアクセスを提供する役割」ということになるでしょう。
まとめ:MCPを活用した自動化の第一歩
MCPは「AIとデジタルツールをつなぐ共通言語」として、業務効率化の新たな道を開きます。これにより、非エンジニアでもAIを活用した複雑な業務自動化が可能になり、複数のアプリやサービスをまたいだ連携が簡単に実現できるようになります。そして何より、人間はよりクリエイティブな業務に集中できる環境が整うことでしょう。
最初のステップとしては、まず小さな自動化から始めてみましょう。例えば「毎週のミーティングノートをまとめてSlackに共有」「請求書の自動作成」「顧客データの分析レポート生成」など、定型的で時間のかかる作業がおすすめです。
MCPが広く普及すれば、ビジネスパーソンは「AIに話しかけるだけで仕事が進む」という未来が実現します。その時代の到来に向けて、今から少しずつMCPの活用スキルを磨いていくことが、これからのビジネスパーソンには不可欠となるでしょう。